あらゆる教育経験を蓄積するAPI「Experience API」
Enterprise APIs Advent Calendar 2015への記事です。
大学や専門学校ではもちろん、最近では小中学校においてもICTの活用が進んでいます。
ICT活用事例として代表的なものにeラーニングがありますが、eラーニングの仕様については国際的な標準規格が存在し、今日はその一つであるExperience APIについてご紹介したいと思います。
Experience API(旧称:Tin Can API)
eラーニングの仕様についてはSCROMという国際的な標準規格が、米国のADLという機関によって策定されましたが、このSCORMに継ぐ世界標準規格として定めらたのがExperience APIです。
Experience APIは、あらゆるタイプの教育経験(学習活動履歴など)を記録するために、教育コンテンツと教育システム間を相互にやりとりするためのAPIです。
略してxAPIと呼ばれることもあるそうです。
Experience APIはRESTベースのインタフェースを備え、データフォーマットはJSONで規定されています。
詳細はAPIリファレンスをご確認ください。
(日本語版もあります)
Experience APIが策定された経緯
SCORMはLMSにおいて学習履歴を管理しますが、SCORMの規格は色々問題があったようです。
そこで、Experience APIでは、SCORMでは実現できない以下の操作が実現可能になるよう規定されています。
例えば以下のようなことが実現できるようです。(以下、Wikipediaより抜粋)
- ウェブブラウザ外でのeラーニングの実施
- モバイルアプリケーションにおけるeラーニング
- 教材に対しての、より広い制御
- OAuthを利用した高セキュリティ
- プラットフォームを跨いだ学習:例として、モバイルで学習開始しPCで終了
- ゲームやシミュレーターにおけるユーザー動作のトラッキング
- 実世界でのパフォーマンスのトレース
- チームでの成績管理
- 教育プランとゴールの追跡管理
- その他のシステムのデータとLMSのデータをマージして比較
- 動画教材等において、どの部分が視聴されているか等の詳細の学習履歴把握
Experience APIに対応したサービス
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edo-xrs
個人から発生する様々なデータを記録するリアルグローブ社のプラットフォームです。学習記録や医療記録等をはじめとする、あらゆるパーソナルレコードをスケーラブルかつ高速に蓄積することができます。『edo-xrs』は、LRS(Learning Record Store)として、総務省「先導的教育システム実証事業」の学習記録データ蓄積機能に採用されています。
(2015/8/12プレスリリースより抜粋)
edo-xrsプロジェクトサイト -
LRS ( Tin Can )
ジンジャーアップ社の統合ソリューションで、日本でいち早くExperience APIに対応したLRSを開発し、様々なサービスに適用されています。
Experience APIの仕様により、e-ラーニング系でよくある動画視聴コンテンツなどで、各教材内の動画コンテンツのどの部分が視聴学習されているか、など細かな視聴実績を把握することが可能になるようです。つまり、動画を開いてもすぐに終了させてしまうとバレてしまう。
また、APIで情報の入出力ができるようになるので、業務系システムなど外部システム間の連携が容易にできるというメリットもあります。 -
その他教育系API Google Classroom API
Experience APIに準拠しているのか不明ですが、GoogleもClassroomという教育系プラットフォームを提供しています。
まだ評価フェーズですが、APIもデベロッパに公開されています。
教育分野においては、コンテンツの互換性が特に重要であることから、インタフェースの仕様については早くから業界標準が存在していました。
そしてExperience APIが定義され、各個人の学習活動履歴がビックデータとして様々な用途に活用されはじめています。
教育分野は新規参入が難しいイメージがありますが、標準化されたAPIを上手く活用することで新たなビジネスチャンスが期待できる分野なのかもしれません。