初の二拠点開催！Enterprise APIs Hack-Night #8 レポート
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12月01日、AgriTechをテーマとしたEnterprise APIs Hack-Night #8が開催されました。今回は初の試みとして、東京会場と札幌会場に分かれ、2つの会場をハングアウトでつないでセッションを行っています。
今すぐかんたんに始める農業IoT「みどりクラウド」の紹介 by 株式会社セラク みどりクラウド事業部 事業部長 持田宏平さま
まずセラクのIoTプロダクトについて紹介がありました。スマート洗面台はAndroidを後ろに配置して鏡に情報が配信できるデバイス。第二弾はスマート野菜工場。家庭用の植物工場で、植物が栽培できる。結果としては一台も売れず…展示会場に持っていった際にクラウド連携で興味を持ってもらえたとのことです。
次に日本の農業を取り巻く環境について紹介がありました。異常気象、気候変動、農業従事者の減少と高齢化、さらにTPPと決して順風満帆とは言えない状況が続いています。
そんな中で大事になっているのが農業の可視化です。ノウハウの共有し、作業の省力化や作業効率の向上につなげていこうという試みです。そのためには計測と記録が大事になっています。
AgriTechについてはオランダが進んでいます。九州と同じくらいの面積で世界2位というレベルです。オランダで使われているシステムは大規模かつ複雑で、教育コストが高くなってしまいます。初期費用も1000万円くらいからで非常に高く、既存施設への導入が困難という問題があります。
日本においてはもっとスモールスタートではじめられるものが必要であると考えられています。安く、簡単それでいて便利なものです。初期コストが安ければ導入しやすく、簡単であれば誰でも使えます。そして自動化できるところからはじめて、既存設備にも手軽に導入できるものがベストです。
そのために、まず継続と記録だけをIT化しようというのが「みどりクラウド」です。みどりクラウドは環境モニタリングに特化したシステムで、汎用ハードウェアを使って安価に構築できます。
仕組みとしてはみどりボックスを使って自動的に情報を収集します。収集するのは収穫量の増加に必要な項目全8項目となっています。みどりボックスの中には3G、WiFiがついています。
全国の生産者の声をもとに開発されています。気象予測データとの比較であったり、最高値や最低表示を一目で分かるようになっています。さらにデータはリアルタイムに更新され、異常な状態を通知してくれる機能もあります。
簡単という点で言えば、みどりボックスはコンセントに接続するだけで使えます。特別なソフトウェアは不要で、スマートフォンやPCに対応しています。さらにガラケーにも対応しています。クラウドはAzureを使っています。
ここで導入事例や実績の紹介がありました。光で開花促進を行っている中でデータを緻密に管理していたり、近代的なハウスで自動で環境を整えている例がありました。ハウス内で停電が起こった際にもそれを検知してすぐにリカバリしているのが分かりました。
機械学習はどうでしょうか？
機械学習については今のところ未定です。
APIの活用については？
みどりクラウドではAPIを提供しているので他社にデータを使ってもらっています。
スマート農業をはじめる by 株式会社スマートリンク北海道 常務取締役 小林 伸行 さま
北海道の岩見沢は人口減少問題が大きいです。とは言え、限界集落と言われて20年経ちますが今なおなくなっていません。これは、取れている収穫量が変わっていなければ職員は意味できるということです。8万人に対して2000人くらいの農業団体がいる状態です。
つまりどれだけ生産量を維持するかが問題になります。例えばトマトについてもフルーツトマトのような価値が高いものもありますので、付加価値の高いものを作れば良いということです。さらにレストラン向けのなかなかない野菜を作っているケースもあります。
もう一つ、原価を下げるという考えもあります。低コストで量を取れるようにするということです。
そのためにICTの活用します。例えば自動トラクター、日本版GPS、土壌診断、Droneなどです。一企業が一緒にやっていくのは補助金が入っている関係上、なかなか難しいのが現状です。国策として乗っていかなければいけません。つまり自治体と組んでいく必要があります。とは言え、一部置いては農家の持ち出しで実施している部分もあります。
農家は保守的な人が多いので、どれくらい収益が上がるのかを明確に示す必要があります。そのために研究機関（大学や研究所）を頼って自分たちの欲しいものを作ってもらい、研究会で引き継いで他地域を含めて定着化させていきます。
こうした取り組みは世界中で注目されており、フィリピンからも視察がきます。40数回視察を受け入れてきました。
農業では人件費が農業生産費の40%で一番高いです。これをどう改善するかが問題です。例えばロボットトラクターで自動で畑を耕すのですが、そのためには非常に精度の高い位置情報が必要になります。GPSだけでは精度が低く、農業のためには数センチ単位の精度が必要です。そこで、岩見沢では自前で基地局を作りました。
作業機械が大きくなっているために、作業が被る部分も大きくなってしまいます。自動化することでそれをぴったり合わせられます。その結果、走る回数が減ったり、作業時間も減ります。さらに今までは切り返しが必要だったのが自動化によって効率化できます。それらの施策の結果、作業時間は50%くらい削減できています。
今後の取り組みと課題についてですが、ロボットトラクターなどを導入すると200〜300万かかります。さらに作業時期が被るために面積を増やせば収穫量が増えますが、作業人数が限られます。人を絞った状態で考えないといけません。作る時期をずらすと、今後はスケジューリングが困難になります。そこで考えているのが完全無人のロボットトラクターで、さらに小型のものを複数台走らせられるようにしていきます。その結果、機械が貸しあえるようになります。
例えばヤンマーさんではタブレット操作可能な重機も作られています。
他の施策としては50mメッシュで天気情報を取得し、それを生育予測に使っています。雲を突き抜ける衛星を使うことで気候変動によって成長するポイントが変わっているのも見えるようになっています。その他、生育センサーを使って農薬量を自動で調整することもできます。小麦の場合、タンパク質の量を自動で計測し、どれくらい多く蒔いたかを判断します。その結果、小麦の蒔く時期を決めるのに役立ちます。
GPS以上の地理データが手に入ると、重機での雪かきにも役立ちます。この辺りは消火栓があるから危ないといった情報を位置情報で把握できます。それがないと水路によく落ちたりします。
このような形で産学官一体で進めています。同じ面積で収穫量をあげるのは面積を広げたのと同じことと言えるでしょう。
農家と一緒にやる上でデータをとったり、一緒に取り組む上でノウハウを出したがらない傾向がありませんか？
基本的に保守的です。3年間口も聞いてくれませんでした。根拠を示していくと姿勢が変わります。自分の技術は見せたがらないのですが、地域全体で収穫量や品質が落ちると地域全体としての買い取り価格が下がります。その結果、農家個人ではなく地域全体の問題になります。
農業ITは技術の相互格闘技だ＠札幌 by 株式会社ファームノート デバイス開発マネージャー 阿部さま
ファームノートは農業の頭脳になる！というコンセプトの会社です。農業のイメージはデータを活用した経営がしづらいというイメージがあります。そこで我々はファームノートという牧場を手のひらに、がコンセプトのアプリを作っています。現在、農業生産量の12%を占めています。1,400の農家さんに利用してもらっていて、牛の頭数は13万頭を突破しました。これまでは調子が悪い牛がいると事務所まで戻って台帳を見ないといけなかったのですが、それがスマートフォンだけで確認できるようになります。
小規模農家にはフリーミアムで、大規模農家は牛一頭あたりで課金という形でビジネスを行っています。私たちはアンバサダー制度を設けており、熱烈に使ってくれている方をFBやTwで連絡してフィードバックをもらっています。ユーザとの接触を増やして本当に使える製品を目指している。
そして現在私が取り組んでいるのがファームノートカラーという製品になります。牛の首に加速度センサーを付けて、発情兆候を見逃さないというサービスです。乳牛は常に乳が出る訳ではなく、分娩しなければなりません。つまり妊娠しなければならず、発情時期を見逃さないのは大切なことです。
そのため、牛のウェアラブルデバイスを開発しています。首にぶら下げて加速度センサーを使って活動量を見ています。さらにデータを収集することで牛の発情を機械学習で判断できるようになっています。さらに昨日（11月30日）にファームノートコネクトをリリースしました。これはAPI、機械学習基盤を提供するサービスになります。
次に技術的な話としてファームノートのエンジニアリング体制についてです。二つチームがあって、アプリケーション開発とデバイス・センサー開発、データ分析があります。今回は後者のデバイス開発についてです。
ファームノートカラーでは発情兆候だけでなく、疾病検知もできます。デバイスは3軸加速度センサー、BLEチップを搭載しており、活動量と機械学習による発情状況というのがメインの機能です。
アーキテクチャとしては次のようになります。
- フィールド
- 牛から牛舎。牛にセンサー、牛舎に小型Linuxサーバ（ゲートウェイ）。BLEでセンサーからGWに加速度センサーデータを送信。搾乳機の電源を入れたらサーバの電圧が足りない、ベルトの素材で悩んだりとインターネットとは遠い部分の悩みが多いです。
- 検知クラウド
- Apache Sparkで集約、分析、学習。結果をRDSに保存しています。
- MLlibを利用して機械学習
- InfuxDBとGrafanaを利用。リアルタイム、ストリーミングを見据えてkefka、Gearpumpを置いたりしています。
- データマイニング
- 元々はRでやっていましたが現在はSparkで集計しています。
実験として牛にLoRaをつけてみたら行動量に大きな違いが見られました。動く牛もいれば、殆ど動かない牛もいます。さらに牛舎に追い立てて戻るのかと思っていたら、夜ご飯の時間になると勝手に戻ってきてくれていました。そのためのモジュールやアンテナが大きすぎ、ホームセンターでちょうど良いサイズの弁当箱を買ってきたりしています。
私はこれはまさに技術の総合格闘技じゃないかと思っています。センサーからクラウド、クラウドからサーバだけじゃありません。土からクラウドまでは想像している800倍以上大変です。
発情判断というのは3つのフェーズに分かれます。状態把握、状況判断、対応処置です。それぞれ、状態把握は記録、状況判断は機械学習、対応処置（作業ロボット、VR）などと技術と密接に関係してきます。農業を分かっている人はたくさんいます、人工知能を分かっている人もいますが、でもその中間がいないのが現状です。興味がある方はぜひ当社に！
有料、無料プランの違いは何でしょう？
無料プランは牛100頭までの管理になります。また、ユーザ数は一人です。有料の場合は牛を群と呼ばれるグループで管理したり、機能差を設けています。
今回は初の二拠点開催ということもあり、様々な不備もあったかと思います。ただ、各拠点（東京、札幌）にいるだけでは聴けない話をお互い聞けたのはとても面白かったのではないでしょうか。