APIを通して広がるビジネスの可能性
企業としてAPIを提供し、かつそれをビジネスで活用していこうという動きが出始めています。今はまだスタートアップをはじめとする小規模な企業か、クラウドベンダーなどのIT系企業で取り入れられている動きですが、徐々にそれ以外の企業においても採用されつつあります。
今回はそんなAPIをビジネスで使うことによる新しいチャンスや事業拡大を目指す方法について紹介します。
多面的展開を前提に考える
これまでのWebサービスのように、PCのブラウザ向けだけに情報を提供するのであればAPIを提供する意味がありません。昨今、デバイスの種類は急激に増加しており、提供形態もまた増えています。それらを認識し、多面的展開を目指すべきです。
分かりやすいところではスマートフォンやタブレットなどのスマートデバイス、サーバサイド連携、IoTデバイス、Webブラウザの機能拡張などが考えられます。情報の発信先を限定しない観点が必要です。
見通しの良い、保守しやすいシステムへ
システムは最初に開発した時には分かりやすくとも、徐々に手を入れていく中で分かりづらく、負債へと変わっていきます。これはシステムが表示部分まで担っている場合に起こりがちです。
API化するということは、システムの表示部分を切り離すということです。すべての表示処理(アプリの画面やWebブラウザなど)はそれぞれのデバイスに任せることができます。また、iOSとAndroidなどで発生する特有の処理はアプリ側で担うことになりますのでロジックもすっきりとさせることができます。
保守しやすいシステムはシステムの運用コストを下げ、新しいビジネスの変化にも追従しやすくなるでしょう。スマートフォンに変わる新しい仕組みが登場したとしてもすぐに対応できるはずです。
システム連携の工数削減
企業間連携や提携を通じて情報の送受信が発生する場合、APIがあるとないとで大幅に工数が変わってきます。特に自分たちだけがない場合、仕様を相手に合わせて設計することになるでしょう。これは相手の企業特有のビジネスフローを含んだものになり、他企業との提携には使えないものになるかも知れません。
APIがあれば、そうした工数が一気に削減できます。もしAPIがない状態で企業連携の話が進んだ場合、そこからお互いに話し合って仕様を検討して実装して結合テストをして…といったことをしているとあっという間に1年経ってしまうはずです。それがAPIがあることで、数ヶ月もあれば完成することになります。
最近のビジネスにおいては手動ではなく自動化されることが前提となっているため、APIの有無によって完了までの時間やその後のスピード感がまったく変わってくるでしょう。
複数企業との提携が容易に
APIは自社のビジネスフローを確立するものになります。全く足りない機能があれば追加開発する必要がありますが、そうでない場合はAPIを利用する側がロジックを組んだ上で利用します。つまりAPIが標準フローを担うのです。
標準フローができていれば、後は水平展開していくだけで企業提携が進められるようになります。トレタ、 POSシステム5社と提携 シームレスなデータ連携を実現する 「トレタPOSコネクト」を3月1日リリースはまさにその典型と言えます。
ビジネスにおけるAPI利用のイメージは、Webブラウザ以外への情報発信先の拡大、他企業との提携などの利用先拡大と言ったものになるかと思います。つまりAPIを単に作るだけでは意味がなく、APIを使って何をするかが大事ということです。そのためにはAPIありきではなく、ニーズありきで考えた上で、APIという自動化、システム化を担う技術をどう組み込んでいくかが重要になるでしょう。