銀行系で広がるAPI公開の動きについて
最近になってFinTechと言われるキーワードが聞かれるようになってきました。Finance + Techの造語で、特に銀行/証券系などの金融サービスとインターネットテクノロジーを組み合わせた新しいサービスを指し示しています。
FinTech自体は概念となっており、その特徴としては以下のように挙げられます。
1. オープンではなくクローズドなAPI公開
みずほ銀行とLINEが提携して、LINE上で残高照会ができるサービスを開始していたり、住信SBIネット銀行とマネーフォワードが提携して家計簿に反映するといった事例が見られるようになっています。要点としては、これらは一般公開されたオープンなAPIではなく、提携企業にのみ公開されるクローズドなAPIであるということです。
FinTechはお金が絡むとあって、一つのミスが金融企業の根幹を崩しかねない危険性をはらんでいます。それだけに多くの企業がAPI公開に及び腰だったのですが、周辺サービスが拡充してきたのに合わせて特定企業向けにAPI公開する流れになっていると言えます。
2. オンライン決済サービスが牽引
FinTechというワードは後付けで、元々PayPalなどを筆頭に決済・送金サービスの多くはAPI公開をしています。日本でもここ数年でSPIKE(スパイク)やWebPay、PAY.JPといった新しい決済サービスが誕生しています。
また、数年前に話題になったBitCoin系の仮想通貨サービスも様々な問題は抱えつつも規模を拡大しており、ブロックチェーンサービスとして成長しています。特にマイクロソフトではEthereum Blockchain as a Service(EBaaS)としてクラウドのブロックチェーン開発環境の提供を開始しています。
3. 世界におけるトレンド
まだまだ技術革新が考えられるとは言え、成熟している決済サービスの他に世界で注目を集めている分野は主に3つ考えられます。一つは銀行系である預金、資産運用系です。もう一つは資金調達や融資に関係するもので、VCなどの巨額のものではなく、個人や中小企業を対象としたマイクロファイナンス系になります。
最後は企業向けのサービスです。現状、FinTech系の多くは消費者向けに提供されるものが多くなっています。そしてそのデータは自社サービスの機能拡充として提供されるものです。対して企業向けの場合は新しい収益源になりえるものが期待されるでしょう。APIによる自動連携をもとに新しい事業が生み出せるかどうかが市場の未来を握っているのではないでしょうか。
4. 自社だけで完結しないのがFinTech
金融×テクノロジーというだけではWebサービス化して終わりのように見えますが、FinTechの特徴としてAPIに注目しなければならないでしょう。つまり他社との連携を視野に入れる必要があります。そのためプレイヤーとしては、基盤になるサービスを提供する企業と、それらを使って顧客やユーザ向けに情報提供する企業とに分かれています。
前者はどちらかというと銀行や証券外車と言った長い歴史をもった企業が、後者はマネーフォワードやfreeeといった新興企業が多いようです。いずれにせよ、新しいユーザ層である若い世代や新しいツールを使いこなす人たちを囲い込んだ新興企業の顧客層を旧来の金融系企業の基盤と組み合わせることで新しい魅力が生まれる点がFinTechの魅力と言えます。
逆に垂直統合的に自社だけでやろうとするのは幅広いユーザ層の取り込みという点においてお勧めされません。銀行一社が自分たちの顧客向けだけにサービスを作ったとしても、現在は複数の預金先をもっている人が殆どでしょう。そうした他の銀行まで扱える可能性がないサービスをあえて使おうとする人は多くないと考えられます。
実際のところ、一般企業としてFinTechをどう捉えるべきなのでしょうか。幾つか考えられます。
- 現在FinTech関連は出資を受けやすいということもあり、FinTech関連の事業を興す
- API連携を使って自社の経理周りの業務を自動化する
- 中小企業融資など、FinTechサービスを利用する
世界をソフトウェアが飲み込むというのは数年前に出たフレーズですが、実際金融系においても通貨や証券の仮想化・デジタル化を通じてソフトウェア化が進んでいると言えます。現実世界で感じている課題があれば、それをソフトウェア化することで解決できる可能性があるでしょう。